今回は前回お話したユーザーごとの行動解析(ミクロ分析)内容を具体的にしていきます。メールマーケティングにおいては、配信リストそれぞれに対して、できるだけOneToOneに近い形でメール配信を行っていけるかが重要になります。

しかしそれを具体的にはどうやって実現すればよいのでしょうか?前回の記事をご覧になっていない方はまずこちらをご覧ください。

→ 中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎
第7回:サイト全体のアクセスをひとくくりに見るだけではなく、個別のユーザー分析が重要

また、初めての方は、まずは連載の最初からご覧ください。

→ 目次:中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎

それを踏まえて今回以降は

1. メール配信の開封状況やクリック状況を把握するには?
2. メールアドレスに対して、情報を紐付けるには?
3. 相手の情報や開封状況に応じて、リストを細分化するには?
4. それぞれのユーザーがサイトにアクセスした後にどんなページの遷移をしたかを追うには?

などについて、お伝えしていきます。是非一つでも実践に移してみてください。

今回はこの中の1. メール配信の開封状況やクリック状況を把握するには?です。

1.メール配信の開封状況やクリック状況を把握するには?

まず最初に配信したメールの開封状況や、そのメールの中にあるリンクのクリック状況をいかにして把握するかです。

開封状況の測定

メール配信の目的は、主としては見込み客を育成するために、他のメディアに買い手を送り込むことにあります。そのためには

I. 相手が一体どんな事を知りたくてメールを読んでいるかを知り
II. 送ったメールによって、その興味が喚起されたかを把握する

という2つが重要です。

どちらが欠けてもうまくいきません。最初の(I)は、そもそも送った相手がどんなことに興味を持っているか知るために必要ですし、後の(II)は興味をもったけれども、それを満足させそしてさらなる興味をひけたかどうか、です。(I)と(II)が両方満たされないと、集客には繋がりません。ここの解析が重要です。

重要なのは「一回の配信では分からない、メールアドレスごとの積み重ねから見えてくる」ということ開封率の測定

まず(I)「相手が一体どんな事を知りたくてメールを読んでいるかを知る」という点において、ここで力を発揮するのは、そうですね、メールの開封率です。一つ一つ送っているメールの開封有無を見ていくことによって、相手がそのメールの「件名」に興味を持ってくれたかどうかを図ることができます。

リスト全体としては「開封率」が指標になります。配信を行う場合、なんらかの趣向や嗜好が決まっている1つの集団であるはずです(例えば自社のメルマガを読んでいる=自社の商品やサービス全体、または一部に興味がある等)。なので、そこに送ったメールの開封率を継続して見ていくことで、狙っている買い手の心に刺さったかどうかが判断できます。

ただ、これはマクロ的な観点での解析です。前回の話の続きとしてはマクロ的な視点の他に、一人一人に焦点をあてた「ミクロ解析」的な視点での解析を行っていただきたいです。

その時重要なポイントが「1人の配信先の過去のメール閲覧履歴を見る」ということです。メール配信を「キャンペーン=メール1通」という横串で刺しているとすれば、ひとりひとりの配信先の時系列の流れは縦串です。

例えば、ある化粧品メーカーが、サンプル購入者に対してメールを定期的に送って購買に誘導しているとします。その時、セールの話以外にも商品の効果、使い方のコツなど様々な内容を送るはずです。受け取り側は内容によっては開封したりしなかったりしますよね。

そうすると、その開封の有無によって、いったいどんなものに興味を持っているか仮説立てすることができます。

スキンケアのキャンペーンのメールを送っても反応しなかったのが、敏感肌化粧品のキャンペーンはいつも反応する、という人がいれば、恐らくこの人は敏感肌化粧品以外のものには余り興味はなさそうだと考えられます。

そうであれば、次からはその人には敏感肌化粧品の話題を送り続ける、と、コンバージョンに至る確率があがりますよね。しかしそれを理解せず、ただひたすらいろいろな内容のメールを送り続けていたら、最悪購読をやめてしまうかもしれません。あるいは、肝心の敏感肌化粧品の内容が書いてあるメールすら「いつもの鬱陶しいやつか」と無視されてしまうかもしれません。

いかに自分事にさせるかが、勝負の肝なのです。

もちろん送る相手の数などにより状況は変わります。少量なら人の手で一つ一つ判断して送り分けられますが、大量に送る場合はこの辺りの仕組みと判断のプロセスを自動化しなければなりません。大手のショッピングECサイトは皆こういったことを行っています。

繰り返しになりますが

● 開封率を見て、全体としての件名などの良し悪しを判断し
● ひとりひとりの開封状況を見て、個別対応の余地がないかを考え、実行する

この2つを押えて下さい。そもそも開封率を測定できない状況であれば、測定できるサービスに変えることを強くおすすめします。弊社のメルマガも外れると開封率20%を切り、うまくいくと40%を越えたりもします。

このように、開封率だけに着目するのではなく、個別の開封状況にも目を向けることをお勧め致します。マクロとミクロです。

開封率測定は、HTMLメールを配信できるツールでは備えていることがほとんどですが、個別のユーザーごとの履歴を追えないサービスは少なく有りませんので、気をつけてくださいね。

クリック率の測定

続いてクリック率です。これはメールを開封した後の話です。メールを開封した人が、そのままのテンションや期待感を維持したまま興味を持ってくれて、メールの中のリンクをクリックして、サイト内を回遊する…、そうなってくれたらいいですよね。

実際メールはシビアです。件名に惹かれて開いてみたら「なかなか知りたい内容にたどり着かない」「内容が件名と違った」なんていう体験をすると、読者はすぐにメールを閉じてしまいます。期待を裏切ってはいけないのです。

その時に参考になるのが「クリック率」です。メールの中のリンクをクリックするということは、興味をさらに持ってもらえた可能性が高いです。クリック先のページとメールの内容が上手くかち合うと、クリック率が大きく改善します。

このクリック率でも開封率と同様にマクロ的観点とミクロ的観点の両方が必要です。

イ) 全体のパフォーマンスを見る、全体のクリック率。
ロ) 個別のユーザーごとの趣向を把握するためや気づきを得るために使う、読者一人ひとりのクリック状況。

この2つが大事です。後者は、開封率とセットになっていると更に良いですね。どの段階まで興味を持ったのかが見えてきます。

このように、最初の一歩である「開封率」と「クリック率」はマクロ的観点とミクロ的観点の両方でのチェックがあると、ビジネス上のインパクトにつながりやすくなります。まだ解析できていないという方は、解析できるように。ミクロ的観点はやったことがなかったという方は、ぜひまず着手してみてください。意外な結果が返ってくるかもしれませんよ。

それでは次回は、続いて、メールアドレスに対して、情報を紐付けるには?と、そうやって得られた情報を元にいかにリストを細分化してパーソナライズド化したマーケティングに近づいていくか?という部分です。

ぜひ次回もお読み頂ければ幸いです。

著者情報:

by Arpit Gumber