前回までメールマーケティングの基本について、この「Benchmark Email Blog」にて連載をしてまいりました。合計12回、これからメールマーケティングを始めるという方はぜひ読みながら進めて頂ければと思います。

中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎 第12回:シリーズの終わりに…全体のまとめ

さて、今回からは新シリーズです。題して「他社メールマガジン大解剖」です。私は個人的に研究のためにたくさんのメールマガジンを購読しています。そして、国内だけではなく海外の物も多いです。

海外サイトのメールについては、海外の方が客観的に見ることができる、自分が使わないので余談が入らないなど、参考資料としてとても良いかつ面白いです。国が違うことによる文化的ギャップなどには注意しなければなりませんが、改めて基本的な部分から、特徴的な部分まで把握するための教材として、おすすめです。

そこで今回からは、海外の企業がどのようにメールを活用しているかを、追いかけて行きたいと思います。ぜひお付き合い下さい。

そして今回はその第一回。ターゲットは日本にも進出して長い「CLINIQUE(クリニーク)」のオンラインショップメールマガジンです。


CLINIQUEの配信時間などの特徴


CLINIQUEはメールマーケティングとしてはシンプルな配信を行っています。ターゲットは働く女性系と思われます。なぜなら配信タイミングなどが、そこにフォーカスされている可能性が高いからです。

具体的には、例えば8月なら

• 土日も含めて毎日1通ずつ配信
• HTMLメールでモバイル対応100%
• 配信時間は5通がAM7時頃、残り25通がPM7時〜10時に集中

という状況です。特に配信時間帯については、通勤時と帰宅時を狙っている可能性が高いですし、モバイル対応100%というのも、移動時に見ることを想定していると思われます。

実際、私も配信時間については色々と実験していますが、最も心理的敷居が低いのはモバイルであれば移動時間です。


企業で働いていれば通勤時と帰宅時ですね。業界によってどのくらいの時間に変えるかはマチマチですので、アクセス解析のデータを時間帯別に分解するなどして、ターゲットとなる買い手がどれくらいの時間にアクティブになるかを汲み取り、それを基に何度も実験をして

配信時間を決定しています。余談ですがSNSへの投稿時間も同じです。

この辺りについては連載のこちらもご覧ください。

中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎 第9回:相手に合わせた内容にすることで、メールマーケティングは加速する :

CLINIQUEについては8月はもう明らかで、ツールで固定配信している事がわかるレベルで毎日の配信時間が決まっていました(7時台配信なら7時3分など)これは、実験済みという常態かと思います。

配信時間帯を把握することは非常に重要です。メールを書けた時に配信、ではもったいないので、最も読まれやすい時間帯を狙うことをおすすめします。開封率は2倍程度差がつくこともあります。色々実験することをお勧めします(朝早すぎるとメールの着信音で起きてしまった人の気分を害することがありますのでご注意下さい。)

と、CLINIQUEについては開封率を測定してデータドリブンでマーケティングしている姿が見えます。


計測・後追いはリマーケティング等で


また、メールマガジン経由で来訪したユーザはGoogleのトラッキングシステム、DoubleClick Floodlightで行動をトラッキングして計測しています。サイト上のタグを管理できるGoogleTagManager経由でそれを行っているので詳細はなんとも言えませんが、メール配信に発生したコストを、リマーケティングなどで回収していく仕組みができていると思われます。

一般的に、ECサイトや小売業ではメールマガジンや広告などで呼び込んできたお客さんが、1回の購買で終わってしまうとペイしないことが多いです。採算割れしてしまいます。そうではなく、ライフタイムバリューを上げていくことが重要です。

そのお客さんが興味を持っている商品カテゴリーや属性を把握し、それぞれのお客さんに対してカスタマイズされたオファーをメールで毎日送ることができれば、一斉配信のメールに比べれば、高いコンバージョン率が望めます。


メールの目的は欲張らない、絞り込む


CLINIQUEのメールマガジンはHTMLメールですが、以下のように基本的に求めるアクションは1つの場合が多いです。そして常に、何らかのオファーがついています。

例えば以下の2つは、両方共「35ドル以上買ってくれたら送料無料かつ、minis(小さいオマケ、言ってみれば試供品の少ししっかりしたようなもの)を4つ無料でプレゼントします」というオファーがついています。minisの実際の画像は2つ目のメールマガジンを御覧ください。大きく見えますが、かなり容量は少ないですので、数回でなくなってしまうでしょう。

【メールマガジン:1】

【メールマガジン:2】

CLINIQUEは、メール経由にかぎらずとにかくこのminisを推してきます。
minisをプレゼントするというのは、日本で言うとスターターキットなどを格安で販売することと似ています。どこでお金が出ていくかが違うだけです。

例えば、minisないしスターターキットが

・原価が10ドルのminisを無料プレゼント
・スターターキットの原価が20ドルなのを10ドルで販売

どちらも、10ドルを使って1ユーザーにお試ししてもらっていることに変わりはありません。そして恐らくCLINIQUEとしては、試供品(minis)を使った人のうちどれくらいが実際に商品を購入し、ライフタイムバリューがどれくらいかを把握しています。

なので、大胆にプレゼントが出来るんですね。大胆にプレゼントが出来れば、お客さんは当然集まります。それだけ売上は上がっていきます。

定量的な計測の上で、もっとも利益に貢献するアクションを見い出し、そこに繋がる最も効率的なルートに乗ってもらうことに注力する。

その結果がメールでの徹底的なminis押しだと考えられます。これはとても効率的な方法です。どんな業種でも、このルートを探すことは重要です。


ユーザーの気持を安易に推測せず、テストする

メールの件名は、毎回大概「送料無料、無料のminis」です。毎回同じで飽きられそうにも思うのですが、開封率を考えればそれほどではないかもしれません。例えば開封率が10%なら、実際にメールを見るのは10回に1度です。

どうしても売り手側は「全部見ている」という前提で考えてしまいます。なぜなら実際に毎回苦労して作って全部見ているからです。

しかし消費者は違うかもしれません。自分の頭の中のユーザー像が本当のユーザー像と一致しているかは、定期的にメンテナンスしないと怖いです。この辺りは実際に購買してくれたユーザーの声や、内容のA/Bテストを行って、その情報を元に判断することが必要です。このCLINIQUEの場合も、一見毎回毎回同じようなオファーで飽きられるように感じるかもしれませんが、テストを繰り返した結果なのではないでしょうか。


終わりに


CLINIQUEは一見、ただがむしゃらに安売りやプレゼントオファーを送っているだけのように見えますが、恐らく裏では様々な実験を行っており、それに基づいたマーケティングを行っています。送料無料とminisのプレゼントが常に「$35以上のお買い上げで…」になっているのも、そこが分岐点だからではないでしょうか。$30では赤字が膨らみすぎてしまい、$40だと購買者数が一気に減ってしまう…恐らくですが過去のメールをもっと掘り下げることができれば、この金額の実験を行っているメールが見つかるのではないかと重います。

ユーザーの気持ちや価値観は大概想像の外側にあります。

なので、きちんとデータを取ってそれを基にテストを繰り返して効率を上げていく、その繰り返しが重要なのだなと改めて思わされた配信例でした。

ECサイトにかぎらず、気づきがあると思いますので、興味がある方はメルマガだけでも取ってみてはいかがでしょうか。

Clinique | Official Site | Custom-fit Skin Care, Makeup, Fragrances & Gifts :
http://www.clinique.com/

次回はまた違う業種にフォーカスして行きたいと思います。

他社メールマガジン大解剖シリーズ

 


 

2回:Costco(コストコ)

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著者情報:

by Andy Shore

Andy Shore found his way to Benchmark when he replied to a job listing promising a job of half blogging, half social media. His parents still don’t believe that people get paid to do that. Since then, he’s spun his addiction to pop culture and passion for music into business and marketing posts that are the spoonful of sugar that helps the lessons go down. As the result of his boss not knowing whether or not to take him seriously, he also created the web series Ask Andy, which stars a cartoon version of himself. Despite being a cartoon, he somehow manages to be taken seriously by many of his readers ... and few of his coworkers.