今回は引き続き、メールマーケティングのステップについて追いかけていきます。前回までで、以下の図の「リンクのクリックなどのアクション」のところにおいて、一体どんな指標を見て、全体のパフォーマンスを計測し判断すべきかという内容でした。
連載の中でずっと出ている以下の図の「サイト内を閲覧する」の部分に当たります。
まだご覧になっていない方は、前の記事を先にご覧ください。
→ 中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎
第6回:メールから集客したユーザをどうコンバージョンに結びつけるか?
また、初めての方は、まずは連載の最初からご覧ください。
→ 目次:中小企業が今押さえるべきメールマーケティングの基礎
では今回は、それとは別の観点「ユーザーごとの行動解析(ミクロ分析)」という内容です。
一般的なアクセス解析ツールで見るような、サイトへのアクセス全体の数字を見て、全体として判断するような解析手法とは異なり、ユーザー1人ひとりの行動に着目して、改善点を発見する助けとする手法です。
メールマーケティングにおける「ユーザーごとの行動解析(ミクロ分析)」を考える前に前提となる、一般論としての「ユーザーごとの行動解析(ミクロ分析)」を押さえておきましょう。
1. 全体を見る「マクロ分析」と個人にスポットを向けた「ミクロ分析」
Googleアナリティクスに代表されるような、一般的なアクセス解析ツールは、サイトに来た人のデータを、基本的には全て十把一絡げにして見せます。こういった分析を一般的には「マクロ分析」と呼びます。
マクロ分析とは?
ではマクロ分析とはなんでしょうか?それは「集計・統計」によるデータを元に解析する手法です。例えば、アクセス数がこれだけあり、直帰率がこれくらいで、平均滞在時間が…、あるいはあるページには何人来て、どこから来たのかという詳細情報など、一般的なアクセス解析ツールで見ることができる分析結果のほとんどは「マクロ分析」です。
マクロ分析は、多くのデータを元にして判断を下しますので、全体の傾向が掴みやすい、データ量が多ければ多いほどノイズが減るなどの特徴がありますが、逆に個別の一人一人に寄り添うことには向いていません。極端な話し「サイトに来た人」全てを十把一絡げにまとめて分析することになります。
もちろん、やり方次第でもっと細かく分類した分析を行うことはできます。例えば「どこからやってきたのか?」「どのページにランディングしてきたのか?」「どんなキーワードや広告をクリックしてやってきたのか?」などを元に、アクセスしてきた人を分類し、それぞれに対して、最適な対応を行うことはできます。
とは言え更に細かい、例えば1人ひとりにフォーカスした分析を行うことはほとんど出来ません。限界があります。
では、ここはもう諦めるしかないのでしょうか。と言うとそんなことはありません。ここで活躍するのが「ミクロ分析」です。
ミクロ分析とは?
ミクロ分析とは、個別のユーザーひとりひとりに目を向け、そのユーザーがサイトの中でどんな動きをしているのかを観察し、それを分析して改善のヒントや顧客理解を深めるものです。いったいどんなページに来て、どんな風にサイトを巡回して、最終的にコンバージョンに至らなかったのか、その流れを見ていくことで、どうしたらもっとコンバージョンしてもらえるかを考えていくんですね。これがミクロ分析です。
ユーザーの価値観が多様化している現在、いかにひとりひとりの趣向やニーズに合わせたプロモーションを出来るかどうかが非常に重要です。その上でミクロ分析が大事なんですね。
2. メールマーケティングではミクロ解析がやりやすい
(ミクロ分析を応用してメルマガ読者をプロファイリング、個々に合ったマーケティングを行おう)
メールマーケティングが面白いのは、このミクロ分析と親和性が高いということです。
例えば
- 名刺のデータを相手の同意の上でリストに加えて配信している
- すでにそのメールアドレスから問い合わせをしてきていて、素性がある程度わかる
- メールアドレスのドメイン名から企業や名前が推測できる
- 過去のメール配信履歴から、どのメールを開封したかをチェックすれば趣向が分かる
などのシチュエーションであれば、相手の個別の情報が手に入りやすいですよね。。これに加えて、そのユーザーがどんなページを見て、どんな件名のメルマガを何時頃、何回開封していて…といったデータがメール配信の中で分かれば、さらにその人に対する個別のアプローチが見えてきます。
個々に合ったアプローチとは?
- 名刺で素性がわかっている人の配信履歴と開封状況を見ることで、いったいどんな情報に対して反応しているのかを知る。それによって、配信するメールの内容を変えていく。
- 素性がわからないユーザーであっても、ドメイン名から会社などの所属先を判断できる。そして過去にそこから問い合わせがあったとすれば、ユーザーと問い合わせをした人物が同一の可能性が高いと考えられる。ならば、メールの開封状況やリンククリック状況から考えて、相手の興味関心を予測できる。結果リアルの営業に繋げることができる。
- GmailやYahooなどのフリーメール等で素性がわからない場合でも、いったいどんなメールの内容に反応しているかによって、ある程度の「刺さるポイント」が見えてくる
など、相手に寄り添ったパーソナライズドマーケティングです。
サイト上で緩くリストを集めているメールマガジンなどでも、最初は難しいですが、配信を繰り返し、それぞれの配信内容に対する反応を見ていくことによって、プロファイリングができるようになります。
リスト全てに同じ内容のメールマガジンを送るよりも、相手の興味関心にそって、リストを細分化し、それぞれに別々のメールを送ったほうが効果は高いはずですよね。
3. パーソナライズドマーケティングとは?
例えば「ハワイ島ツアー」のプロモーションのメルマガを開封した人を、別途配信先セグメントとして抜き出して、そこに対して「ハワイ」に関連する情報をメールでお送りします。
そうすることによって、ハワイに興味がある人には、求めている情報を届けることができ、ハワイに興味が無い人には、何も送らないということができます(関係ない情報がたくさん送られてきたら、そのメール配信者からのメールを開封しなくなってしまいますよね)
それ以外でも、特定のメールを開封しなかった配信先を別セグメントに分けて、件名を変えて再送することで、相手の興味関心の方向性をプロファイリングする助けにもなります。
これは、価値観や行動が多様化している今の時代にマッチした、効果的なやり方です。また、マーケティングを自動化するマーケティングオートメーションにも繋がります。
Webサイトのアクセス解析とは異なり、メールアドレスごとに個別の情報が集まりやすいのが、メールマーケティングのメリットの一つです。
4. ミクロ分析に取り組み、まずは配信先リストの情報収集から始めよう
では具体的にはどうしたら良いのでしょうか?悩んだらまずは以下の様なことを行うことをお勧めいたします。
- メールアドレスごとにメール配信の開封状況やクリック状況を把握できるようにしておく
- 問い合わせや、あるいはドメイン名などから、相手の情報がわかる場合は、それぞれのメールアドレスに対して、その情報を紐付けられるようにする。
- 相手の情報や開封状況を見ながら、いったいどのような人々がメールを読んでいるのかを考える
これは一見大変そうですが、そうでもありません。確かに、昔はこういったことは手動で行わなければなりませんでしたが、今はその機能を持った配信ツールがあります。
それを使えば、非常に簡単にパーソナライズドマーケティングを行えるようになります。リスト分割(セグメント)も、過去のメール配信の結果を元に分割できる機能が付いている配信ツールがあります。簡易CMSのようなものです。
そして、以下は工夫が必要になりますが、可能であれば「それぞれのユーザーがサイトにアクセスした後にどんなページの遷移をしたかを追いかけられるようにする」と最高です。
それぞれのユーザーがサイト上でどんなコンテンツを見たか、という情報を合わせることができれば、さらにそのメールアドレス事に密着したメール配信ができるようになります。
5. 次回予告
この部分はイメージがつきづらい部分もあるかと思いますので、次回以降の記事で具体的な手法などについてお伝えしていきます。
具体的には
- メール配信の開封状況やクリック状況を把握するには?
- メールアドレスに対して、情報を紐付けるには?
- 相手の情報や開封状況に応じて、リストを細分化するには?
- それぞれのユーザーがサイトにアクセスした後にどんなページの遷移をしたかを追うには?
などについて、具体的な部分をお伝えしていきます。
ぜひ次回もお読み頂ければ幸いです。