少し間が空いてしまいましたが、他社メールマガジン大解剖の第3回をお送りしたいと思います。今回のターゲットは「Buffer(バッファー)社」です。

Bufferという名前は、そこまでまだ馴染みがないかもしれません。

Buffer社の出しているBufferというツールは、海外ではメジャーなSNS投稿管理ツールです。日本でも馴染みのあるHootsuiteのようなサービスで、「複数のSNSアカウントを管理し」「それぞれで予約投稿を設定でき」「結果の解析ができる」ものです。

さらに、外部のSNS分析ツールと連携させると、例えばTwitterではいつつぶやくと最もたくさんのフォロアーに見てもらえやすそうかなど、最適な投稿スケジュールを見つけてくれたりもします。私も有料版を使っています。欠かせないツールです。

さて今回はそのBufferのメルマガを分析して、ヒントや気づきを探していきます。
SNS系のツールということで、人間心理・購買プロセスを意識したポイントが見えてきて、Webマーケティングと言う観点で興味深い点が多いメールマガジン運用をしています。

2種類の異なったメールマガジン配信から購読者を育て、サービス購入を検討してもらう理想的な配信メソッドを行っています。きっと参考になるはずです!


Bufferの配信曜日・時間などの特徴


まず配信タイミングについて確認します。実際の配信時間を2015年9月〜10月に受け取った35通のメールからのデータです。少し前のデータなのは、サイバーマンデー(主にアメリカ発祥の感謝祭の次の月曜日のこと。この日はネットショップのセールが一斉にスタートする日)や年末年始はセール絡みで傾向が読めないケースが多いからです。


深夜の配信でも購読者から苦情がこない!?


配信時間ですが、率直に言ってかなり偏っています。

以下は全ての曜日についての集計ですが、圧倒的に深夜0時〜3時の間に固まっています。対して昼間含めそれ以外の時間帯は、ほぼゼロに近い配信数です。


詳細を見ると、配信時間としてはAM2時とAM4時が多いようです。

ビジネス系のサービスは退社後の19-20時から24時位に、くつろいでいる時間を狙って配信することも多いのですが、それにしても少し時間が遅すぎます。

日本でこれをやったら「夜中のメールで目が覚めちゃったじゃないか!」と怒られそうですね。

ですが、これは「早朝の出勤中にチェックしてもらう」「朝一番のメールチェック時にチェックしてもらう」ことを狙っているのだと思われます。


平日朝の配信がいい理由



続いて配信曜日です。上の円グラフをご覧ください。上位は

1. 水曜日(26%)
2. 木曜日(23%)
3. 金曜日(20%)
4. 火曜日(17%)

配信時間は早朝なので、それぞれのメルマガはその曜日の朝開封して見てもらうことを狙っていると思われます。

SNSにおいては投稿曜日・時間が成果にかなり影響しますので、SNSマネジメントツールを作っているBuffer社が配信時間を考えていないということは考えにくいですので、これも恐らく様々な実験の結果ではないかと思います。

土日にあまり出さないところを見ると、基本的には出勤時に見てもらうことを想定していそうです。

Buffer自体は必ずしも企業ユースではなく、無料版もありますので、個人のSNS投稿便利ツールとしても使えるのですが、ターゲットを絞り込んでいるのかもしれません。


最もターゲットとしているユーザーに的を絞った配信スケジュール


メールマガジンの内容は、企業でいかにソーシャルメディアを活用するかという記事の紹介がメインですので、その文脈に合わせているのだろうと推測します。

幅広いユーザー層を取ろうとするとどうしてもメッセージがぼやけてしまい「誰にでも何となく伝わるけれども、誰も大してアクションを起こしてくれない」ということになってしまいます。

世の中で誰にでもグサッと刺さるメッセージというものは、ほとんどありません。ターゲットを絞り込んで、そこにグサッと刺さるような内容にしなければなりませんよね。

そのためには、ターゲットユーザー自体も絞り込んだほうが良いです。なぜなら非ターゲットの人に配信することで「なんだか自分にとって興味ないものがたくさん送られてくる」というネガティブ感情を引き起こし、結果としてそれがネット上で悪い評判形成に繋がる可能性もあるからです。

サービスの詳細より前に、悪い評判に触れる人が増えると「Buffer?なんだか悪い評判は聞いたことがあるから、何のツールかわからないけれども、避けておこう」と思われてしまいます。悪事千里を走るとも言いますし、悪い評判はできるだけ発生しないようにすべきです。

そういった狙いも含めて、Bufferのメールマガジンの配信時間や配信曜日は、完全にオフィスユーザーの通勤時間帯を狙っている配信時間にしているのではないかと思います。

メールマガジンを出す際は、どうしても「できるだけ幅広く沢山の人に知ってもらいたい」と思いがちですが、本当は「(お客さんになる可能性がある)人たちにできるだけたくさん知ってもらいたい」です。ここは重要なポイントですね。


2種類のメールマガジン


Bufferのメルマガはほぼ全てがスマートフォン対応しています。潜在客や見込み客のことを考えれば自然ですね。

内容としては4回に3回程度がブログ記事の紹介などいわゆるニュースレター、一月に一度ほど、サービスのアピールや新機能などの紹介といったセールスレターが入ります。

ニュースレターの例としては以下です。


これは「Buffer’s Marketing Manifesto in 500 Word(Bufferのマーケティングマニュフェストを500字で書いてみた)」という記事を書いたので、ぜひ読んでねという内容です。


ニュースレターとセールスレターの組み合わせが大事


配信する全てをセールスレターにしてしまうと以下の様な結果を招いてしまいます。

• すぐに欲しい人や興味がある人以外は「結局売り込みだ」と感じて読まなくなってしまう
• 潜在客の育成ができないので、マーケットを育てられず、ジリ貧

なので普段は上記のようなニュースレターで、ノウハウや判断基準、成功へのストーリー、ハウツーなどを流していき、読み手の興味関心やSNSに関する知識レベルを高めてあげるのが良いです。

そして、時々以下の様なセールスコンテンツを送って、育ってきた見込み客に売り込んでいくんですね。


この動画は、Bufferを使ってうまくソーシャルメディアを活用して行くためのチュートリアルを促しています。

Bufferが行っているメール配信メソッドは以下の様になります。

1. 情報提供を行って見込み客を育成、同時にマーケットも育てる
2. セールス系のレターで成約に結びつける。

これを繰り返してまるで農業のようにメールマガジンを通じてユーザーを増やしていく、ということをBufferは行っています。


今のWebマーケティングにおけるメルマガ活用としてお手本に最適


プロダクトやサービスを売る際には、このやり方はとてもおすすめです。なぜなら今は

• 類似するサービスがたくさんある(本当は類似していないのだけれど、判断基準がわからないので類似したものとして捉えられているものも含む)
• 何を基準に選んだらいいかわからない
• それをどう使えば、成果に繋がるかわからない
• 比較検討しないと気がすまない

時代だからです。

悩んでいる人に情報を与え続けて、判断基準を提供し、活用イメージを持ってもらい、接触頻度を上げる事で親近感も持ってもらう。

昔はこれを「おみやげをもった」営業マンが足で行っていたのですが、今はメールで行えます。また、HTMLメールを使うことで、動画もすぐに見せられますので、ますます相対しているような印象を与えられます。

Bufferのメールマガジン活用は今のWebマーケティングを踏まえた、お手本のようなケースなので、ぜひ実際のメールマガジンも購読して頂くことをお勧め致します。英語なのが難点ですが、なんとなく雰囲気は伝わると思います。

ぜひご参考にして頂ければ幸いです。また、Buffer自体も便利なのでぜひ。安いですし。無料でも十分使えますし。

それでは今回は以上です。

次回はまた違う業種にフォーカスして行きたいと思います。


他社メールマガジン大解剖シリーズ


第1回:Clinique(クリニーク)
第2回:Costco(コストコ)

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著者情報:

by Masaki Fushimi

Benchmark Email Japan コミュニティーマネージャー。 日本の大学卒業後ロックの本場イギリスへ。現地の大学で音楽ビジネスを学びながら外人として生きることの厳しさと異文化の中で生活する醍醐味や刺激を体感。日本帰国後は映像系NPO、クラウドファンディング型ライブ招致会社を経て2012年2月よりBenchmark Emailに入社。 主にメールマーケティングに関する有益な情報を発信しています。