前回Benchmark Emailの企業ロゴ一新でブランドの新しい方向性を表現というブログでご紹介しましたが、Benchmark Emailにとって2017年はブランドとして、そして会社として生まれ変わりを果たす年でもあります。

今年3月にBenchmark Emailは新たなロゴをリリースしました。今回のブログではその時のアメリカ本国のデザインチームがどういったプロセスを通して生み出したのか、その制作手段をお話します。チームとしてワークするためのノウハウなど、企業のデザインチーム、ブランドデザインを担う方必見です!

ブランド認知の再構築への挑戦

Brand Retrospective

 

まずは振り返ってみる:

Benchmark Emailは、2004年にメールマーケティングサービスとしてスタートしました。当初は誰にとっても使いやすいサービスを目指していました。

それから10年以上に渡り、会社として多くの変化を経験してきました。そしてその変化が起こるたびに、当時の会社の色を反映させたロゴが生まれてきました。

私たちの挑戦

今まで製品の機能やデザインが成長する上で、企業が想定していたものとは違った方向へ進んでしまっていたケースがありました。スタートアップや中小企業である以上、時間とリソースには限りがあり、何を優先しプロジェクトとして進めて行くべきなのか、常にその問いにぶつかりました。

そんな中でも、Benchmark Emailは常にブランドとしての軸を持ち続けることを意識していましたが、Benchmark Emailが一体どんなもので、その変化の中でブランドが目指す方向を考えなおすというタイミングがありませんでした。

日々の仕事を続けることに、ぎこちなさと違和感を覚えると共に、Benchmark Emailというブランドをとらえきれずにいることに気がつきました。

そこで、会社として変化の中でもぶれることのない確立したブランドを持ち、それを表現するアイコンを作ることにしました。

その中でもデザインチームとして特に力を入れたものが新たなロゴの作成でした。なぜなら以前のロゴには大きな弱点が2つあったからです。

まず1つは会社名を筆記体で書いただけのシンプルなロゴだった為、限られた小さなスペースにロゴを掲載する場合、読み取れないくらい文字が小さくなるなど、うまく活用できるものではありませんでした。なのでそのような場合、しばしば「Benchmark」の頭文字である「B」のみを使用するなど、本来表現したかったものとは異なる代替案を採用するしかありませんでした。

そしてもう一つの課題は、ロゴに採用した色でした。以前のネイビーブルーは、このBtoB業界においては広く使われているカラーで、事実他の多くのソフトウェア会社のそれと類似しているものでした。

企業改革はどうやって行えばいいのか?

正直な話、ブランディングの再構築に取り掛かった当初、まず自分たちが何から取り掛かればいいのか分かりませんでした。新ロゴの作成など、明確にすることができた課題は、目の前にある全てのタスクのほんの一部にすぎませんでした。

「9つの言語で利用可能なツールを提供し、9ヶ国にオフィスを持つ会社のブランディングを再構築するには何をどうしたらいいのか?」「何から手をつければいいのか?」本当にわからないことばかりでした。

そこで私たちは手始めに、課題解決の糸口となるようなヒントを探し、ネット上で見つけられる限りのブランディングについてのWebページや文献を調べました。

結果、当然ながら企業の数だけその方法は異なり、大企業のように多くの資金を費やしコンサルタントを雇い大成功を納めるパターンもあれば、社内のリソースだけで限られた範囲で行うといったものもありました。いくつかの事例を知った上で、Benchmark Emailの特性とツールの機能を熟知していたデザインチームは事例にとらわれず、自由に自分たちでブランディングの再構築を行なっていくことに決めました。

会社というブランドの方向性(ブランド・アイデンティティ)を探る

Team Meeting

初期のアイデンティティは組織的なコンセプトを持たせてはいたものの、そこまで深い思いや意図を背景としたものではありませんでした。会社が成長するにつれて、競争が激しく急速に変化する市場の中で成功し続けるためには、明確な目的や目標、そして独自性を持つことが必要であることに気がつきました。

そこでデザインチームがブランディングの改革を始めるにあたり、Benchmark Emailは誰なのか、誰になりたいか、またその身を投じている業界にマッチしているのか、正確に把握することにしました。

その為にも会社のCEOである、Curt KellerとDenise Keller夫妻と多くのミーティングを行い、まずはブランドの概要作成に取りかかりました。

CurtとDeniseは非常に現実的かつ実践的で、まるで自分の家族のように感じられる仲間と快適な空間づくりを大切にする会社を作り上げてくれました。その考え方は社員である私たちも同じで、そういった会社としての「ヒト感」やサービスの価値をツールを使うユーザーにも伝わるようなブランディングが不可欠であると感じました。

では、ここから実際に新ブランドロゴが出来上がるまでの工程を各ステップに分けてお伝えします。

ステップ 1 – Benchmark Emailの特性を定義

まず最初にユーザーと直接話す機会を設け、ブランドの特性を定義付けさせることに取りかかりました。

そこで明確になったのが、Benchmark Emailは「強力且つプロフェッショナルでありながら、実用的で親しみを感じられるもの」ということ。このコンセプトを会社の芯と位置付けることになりました。

Mindmap

次にこのコンセプトに合うように、サービスの特徴を思いつく限りリストアップし、リスト内の言葉を単語単位で整理していきました。

巨大なポスターに紙に書いた単語を置き、関連する単語を近くに配置します。何百という数になった単語の中で、特に強い意味合いを持つものをハイライトしていくことで、ブランドとして確保すべき特性を絞り込んでいきました。

ステップ 2 – 全てのアイデアを書き出す

ハイライトした単語からインスピレーションされるイメージを実際にスケッチしていきました。これは大変な作業でしたが、明確なテーマを浮かび上がらせるにはとても有効な手段でした。そうやってベースとなるスケッチをいくつか作った後、より強いコンセプトを持ったデザインに絞っていきました。

まずブランドを象徴する単語を組み合わせてアイデアを生成することにしました。右側に特性を表す単語を並べ、左側にシンプルな単語並べます。それら左右の単語の組み合わせをいくつも検討し、より多くのアイデアをブレストしました。

ステップ 3 – 実践と繰り返し

プロセスが進むにつれ、ステップ2のプロセスを何百回と繰り返しました。この過程で学んだことの1つは、常に前へ進み続けるためには、繰り返し実践していくのみであるということです。

時間がたつにつれて、すでにアイデアは出し尽くされたように感じましたが、これまでに作成してきたものではまだ納得がいきませんでした。

行き詰まってしまった時は、より多くの実践を行い、物事をさらに進めていくようにしています。

ステップ 4 – 方向性の決定

すべてのアイデアを出し切ったと確信したとき、ロゴの最終的な方向性についての議論に移りました。これは、全行程の中で最も困難な時でもありました。ブランドを次のレベルに引き上げるための強力なロゴのイメージはいくつかありましたが、妥協せず普段以上に慎重になっていきました。

最終的に最もブランドの特性を表したものを残す形となりました。その上で投票を行い、その後議論し、チームとしてベストなものを選びました。その時、次の過程に進むことへの安堵感を感じていました。

ステップ 5 – 正しいと思うまで繰り返す

ここまで来ると作業は終わりに近づいてきているかのように見えますが、その先にはまだまだ多くの作業が残っていました。ここからデザインの清書にあたり、手書きとデジタルの両方で作業を続けました。

何度か繰り返す中で、完成に近いポイントはいくつかありましたが、同時に問題点が見えたりと完成まで近いようで遠い時間が続きました。それでもチームは作業を続けましたが、どれも納得のいくものではありませんでした。そんな中デザイナーの一人であるクリスティンが、これまでのロゴ作成の過程を見直を開始しました。すると彼女はそれまでベースとして調整を繰り返していたロゴ画像を見せながら、何を発見したかを説明し始めました。

「ロゴの中心部、いくつもの線が重なり合うところではマジックが起きている!そこには会社の成長と変化があり、常に進化を遂げていることを表しているんだ」

線は左から右へ交差して、その先へ伸びています。線が中心を通過すると、それまでの軌道から位置を変えて、さらに成長を続けます。これは会社だけの話でなく、それを利用するユーザーのビジネスの成長への希望も反映されているものです。こうして新しいロゴには、Benchmark Emailが願う全ての特性を含ませることができました。

ステップ 6 – フォントと書体

新しいロゴが決まったら今度はフォントと書体決めに移りました。

最初に試したのがサンセリフというフォントでした。しかし思っていたよりも印象が堅く、会社の特性には合いませんでした。その後もしっかりとしていても親しみやすく、フレンドリーな書体を探し、何百ものフォントを試しました。

結果として最終的にたどり着いたのは、Luzi TypeというシリーズのBuenos Airesというフォントでした。またLuzi TypeシリーズのMessinaというフォントも気に入り、それはロゴとは別で、メインの書体に決まり、こうして新しいロゴが完成しました。

さいごに

今回のプロジェクトはデザインチームにとって、本当に厳しいプロセスを多く経験しました。

学んだこともたくさんあり、振り返ってみると、「もしも、より多くのリソースやアドバイスがあればさらに心強かっただろう」と感じます。このブログ記事を通じて我々のプロセスを共有することで、会社のブランド・イノベーションを進める多くのデザイナーにとって何かの指標や方向性をご提供できることを望んでいます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

アメリカデザインチーム一同