本記事はBenchmark本社のブログ記事 “Apple’s New Hide My Email Feature: What it is and How it’s Changing Email Marketing” を翻訳したものです。

著者(略歴)
Lee Li
中国の深圳市出身のプロジェクト・マネージャー。現在はシンガポール在住のB2B専門コピーライター。中国のフィンテックスタートアップ領域でTaoBao社、MeitTuan社、DouYin社(現TikTok社)のプロジェクト・マネージャーとして10年の経験あり。

 

B2Bマーケターは、Webサイトからの資料請求やメルマガ登録フォームへの登録をきっかけとして、オーディエンスに価値のあるコンテンツを届けたり、プロモーションメールを送ったりすることで関係を築いていきます。

しかし、B2Bブランドの対象となるオーディエンスが、登録フォームに企業アドレス以外のメールアドレスを入力することがあります。この場合、コンバージョン率を高めて顧客を満足させるシームレスなカスタマージャーニーを実現するために不可欠な、リードとその企業の識別が不可能となってしまいます。

フォームに入力される企業アドレス以外のメールアドレスには意味がないと判断しているB2Bマーケターもいます。この記事では、企業のメールアドレスではない、ランダムなメールアドレスを生成できるApple社の「メールを非公開」機能と利用方法、そしてB2Bマーケターへの影響についてご説明します。

「メールを非公開」機能と利用方法について

昨年、Apple社はサービスや商品を通して消費者データプライバシーと保護を推進させる最新の取り組みとして、iCloudユーザー向けのプライバシーサービス3本立てを提供することになりました。このiCloud専用機能の中の「メールを非公開」機能を利用することで、ユーザーはicloud.comで固有のランダムなアドレスを簡単に生成することができます。この機能は、「Apple でサインイン」と iCloud+ に組み込まれています。

Appleユーザーは「メールを非公開」機能を使って、有効なメールアドレスを必要とするデジタルサービスのアカウントへの登録やログインを行うことができます。その際に生成されたランダムなメールアドレスは、アカウントを作成したアプリやWebサイトのみにしか公開されませんので、個人のメールアドレスのプライバシーを守ることができます。

また、ランダムに生成されたicloud.comアドレスに送られたメールは、任意のメールアドレスに転送(リダイレクト)されます。転送が不要になった際は、ランダムに生成されたicloud.comアドレスを簡単に無効化することができます。このアドレスには有効期限がないため、使い捨てアドレスなどと違ってリスクは高くありませんが、B2B企業やマーケターにとっては依然として好ましくないものであることに変わりはありません。

「メールを非公開」機能がB2Bマーケターに及ぼす悪影響とは?

「メールを非公開」機能を使って登録が行われた場合、登録者の正体が分かりません。マーケターにとって、新規登録のあったアドレスが正規のアドレスなのか、ランダムに生成されたアドレスなのか簡単に見分けることが難しいため、このような新規顧客に対し効果的なアプローチを行うことが困難になります。

さらに、マーケター側でフォーム入力者が再度「メールを非公開」を使用するのを防ぐ方法がないため、新規で登録フォームに入力した人が過去にもフォームを入力したことがあるかどうかの判断が不可能になります。

顧客リスト内のメールアドレスの質を高くするため、Kickboxなどのリスト照合サービスを利用しているマーケターにも影響を及ぼします。この機能の利用者がランダムなアドレスを無効にした場合、メールは自動的にハードエラーとなるため、メールの到達率低下を招きます。ハードエラーの数が多ければ多いほど、迷惑メールの苦情を受けるのと同じように、有効なメールアドレスを含めた全体の到達率が低下してしまいます。

高い到達率は、潜在顧客との関係を育み、コンバージョンを向上させるために非常に重要です。複数の支払いオプションなどの重要な機能を備えた請求書作成ソフトウェアがよりスムーズな顧客体験を生み出すのと同じように、できるだけ多くのリードが楽しいカスタマージャーニーを維持できるよう、到達率も常に十分でなければなりません。

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「メールを非公開」機能の使用率増加によるハードエラーを回避する方法

使い捨てメールアドレスサービスに比べて便利なこの「メールを非公開」機能によって、Appleの新しい有料サービスのユーザー導入率は上昇すると思われます。これにより、2021年末から2022年にかけてicloud.comのメールアドレスのハードエラー率が上昇することは避けて通れません。

「メールを非公開」機能のようなApple社のプライバシーサービスやサードパーティーCookieの廃止は、多くのマーケターの仕事を確実に難しくさせています。では、「メールを非公開」機能の導入率が上昇する中で、B2Bマーケターはどのようにメールのエラー率を回避すれば良いのでしょうか?

もっとも重要なのは、現在のメルマガ配信頻度を評価し、顧客とのタッチポイントを調整することでメールが届かなくなってしまうことを未然に防ぐことです。企業はメルマガの推進手順を強化するため、適切なセキュリティ基準を採用する必要があります。Hosting Canana社のWeb開発者兼オンラインマーケティング担当者のGary Steven氏は、「メールホストにメールのプライバシーを確保するための適切なセキュリティ基準が備わっているかどうかを確認することが非常に重要だ」と述べています。

また、「ホストを選ぶ際には、ImapとPop3によるメール配信が可能かどうかを確認してください。これらのセキュリティ基準は、個人的なメールアドレスのプライバシーが保護されることを保証し、情報が悪者の手(競合他社やハッカーなど)に渡ることを防ぐことができる」と主張しています。

その他の対策としては、潜在顧客や既存顧客に対して「フォームに実際のメールアドレスを入力した場合にのみ、質の高いカスタマーサービスを受けることが可能」と説明することなどが挙げられます。また、「メールを非公開」機能導入率の上昇に伴い、到達率や開封率などの標準的なメールパフォーマンスのKPIを追跡してみるのも良いでしょう。

まとめ

マーケターにとって、プライバシーはこれからも主な課題となるでしょう。しかし、企業は顧客のニーズとビジネスのニーズのバランスを取ることを忘れてはいけません。B2B企業は、現在行っているメルマガ配信の可能性と成功度合いを再評価し、必要に応じて収集するメールアドレスの種類を変更しましょう。

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