顧客やユーザーとのコミュニケーションはビジネス発展においてとても重要な役割を担っている。とはいえ、すべての方とOne to Oneのコミュニケーションを行うことは容易なことではない。

どのタイミングで、またどういった手段を用いて行うのか。テクニックももちろん大切だが、最も大事なことはそこに「思い」がこもっていなくてはならない。そう語るのは学校の先生を対象とした、情報共有サービスSENSEI NOTEを展開する株式会社LOUPEの浅谷治希さん。「人肌感のあるコミュニケーションにいつも気を付けている」と語る浅谷さんにSENSEI NOTEにおけるコミュニケーションとしてのメール配信の運用法について伺った。

画像を含んだハイコンテクストなコミュニケーションができるから、HTMLメール配信を決めた。

学校の先生は元々1人で授業の準備をされることが多く、そのノウハウや知識を共有する場、相談ができる場が少なく、こんな問題を解消したいという思いから2013年2月からサービスを開始。SENSEI NOTEは現在全国で20%の学校の先生に利用されているという。

―SENSEI NOTEを活用することで、もっと広いコミュニティーの創造・提供を可能にしている。

例えば同じ校内に3人しかいない小学1年生の先生も、SENSEI NOTEにアクセスすれば1000人の先生がいて、彼らと情報を交換することでお互いの知識を伸ばしてもらうことができる。先生のためのSNSを作ることで彼らの会話を掘り下げるコミュニケーションを可能にしている。

コミュニケーションがサービスの核であるSENSEI NOTEにとって、運営会社とユーザーとのコミュニケーションにおいても、とても重要な部分であると考えている。

そんなSENSEI NOTEではサービスのアップデート情報提供手段として、画像を含んだハイコンテクストなコミュニケーションができる、HTMLメールの配信を行っている。しかし、HTMLメールを個別で配信すると、作成にかかる時間、業務項数もかさむことが容易に推測できたことから、メール配信運用開始当初から配信システムの導入に踏み切った。

そんな時に出会ったのが、コーディングの知識がなくても簡単にHTMLメールの作成・配信が行えるBenchmark Emailだ。

「ドラッグ&ドロップのメールエディタを使って簡単にメールを作成することができる。しかも安価なので、メール配信に大きな予算を割くことなく、本サービスの開発に時間、お金をかけることができる」

こんな理由からBenchmark Emailの導入を決めたと言う。

メールはあくまでもツール。重要なのはそれがOne to Oneのやり取りであることを明確にすること

Benchmark Emailはマニュアルを読まなくても使えるシンプルなインターフェースだから、使う上で特に難しいことはない。どちらかというと、文章など実際のコンテンツ作成が運用のカギだ。

そう話す浅谷さんにはSENSEI NOTEらしいメールの効果測定方法がある。
メールの開封率やリンクのクリック率を測定基準とする運用が一般的であるが、こちらでは『配信したメールにどれだけ返信があるか』を測定値としている。

その理由として「開封率やクリック率を効果測定値とした場合、制作側もいつの間にかメールを開いてもらう、リンクをクリックしてもらうことに注意が向いてしまい、メール配信の本質から外れてしまう」と浅谷さんは語っている。

しかしながら、一斉メールに対して返信をもらうのは容易なことではない。

これについて、浅谷さんは以下のように答えている。

「サービスにおいてユーザーの方との接触を常に意識している。またユーザー1人1人に対するコミュニケーションにおいて、初めて接触した時から最後までを1つのストーリーとし、メールを含んだすべてのコミュニケ―ションをパーソナライズしなくてはならない。一斉メールにも同じことが言えるし、すべての連絡は個人名で行っている。」

例えば、サービス改善のためのリサーチとしてBenchmark Emailからユーザーアンケートを送る際にも「こんなことを考えています」、「こんな声を聞かせてください」等アンケートフォームを付けてメールをし、回答があった方に直接電話でヒアリングも行っているという。
また、メールだけに限らず、Facebookや電話、チャット、実際に会うなどユーザーとのインタラクティブな環境をできる限り多く作っていると言う。

つまりメール、Facebook、電話やチャットはコミュニケーションのツールに過ぎず、いかにユーザーにパーソナルな存在であるかを認識してもらえるかが、重要なのだ。

その結果として、一斉メールにもかからわず、顔の見える相手として機能の改善依頼や叱咤激励を返信としてもらうことができるのだ。
(メール配信予定日直前に時間に追われて作成したメールでは気持ちも伝わりにくいですよね。)

この考え方をメールにも反映させている。

一斉メールだからと言って、企業からの業務連絡ではなく、あくまで個人がユーザーであるあなたにメールしています、という姿勢を見せることで受信者からの反応を獲得していると言えよう。機能のアップデート情報をメールでお知らせする際にも、プロセスや事柄だけを伝えるのでなく、「○○のアップデートはこの部分の開発に苦戦しました」等、もしかすると本来言わなくてもいいような情報を伝えることで、より人肌感を伝えられる。

オンラインという顔が見えないサービスだからこそ、このような、向かい合って話すかの如くユーザーに話しかけることで、運営側の顔が見えるようになる。こういった努力の結果、一斉メールへの返信という成果が得られているのだ。

つまりメールでのコミュニケーションをメール内のみで完結させるのではなく、コミュニケーションはメールの外にも広がっていて、それらを1つの線につなげることが重要なのだ。

「頑張っているところを見せることがブランドのファンづくりに役立つ。SENSEI NOTEは先生にとって、あなたのためのサービスというスタンスではなく、共に学校現場をよくしていくパートナーという認識」

こういった姿勢がメールにおいても良い反応を得られる秘訣となっている。

メールだけで終わるコミュニケーションなんてない!

浅谷さんのコミュニケーションのスタイルはサービス立ち上げ時、自身が学校のこと、先生のことを何もわからないから、直接先生方の話を聞いていたというスタンスが、今につながっている。

こういった、ひたむきにユーザーと向き合い、常にリアルで直接的なコミュニケーションを心がけているからこそ、メールでもその「人肌感」が伝わるのだ。
またそんなぬくもりを感じることができるコミュニケーションを可能にするのもHTMLメールならではではないだろうか。うわべだけではなく、また早い段階での効果を期待するのではなく、コツコツと積み重ねてきた関係性がサービス全体に良い結果となって表れている。

点と点のコミュニケーションではなく、1つのストーリーとしてのコミュニケーションがビジネスには重要であり、メールはその一端を担うことのできる存在。
浅谷さんはそんなことを教えてくれた。