目次
調査の目的
メール配信システムを提供する当社では、2020年のコロナ禍における緊急事態宣言の前後で企業のメルマガ配信にどの様な変化があったのかについて調査を行いました。また、メルマガに限らず業務全般への影響を調べるため、併せて日本のWebマーケティング従事者の働き方の変化についても調査を行いました。当社内のマーケティング調査用に行ったものではありますが、今回はその調査結果の一部をご紹介します。
インターネットリサーチによる調査を行った。当調査上では下記の業務をWebマーケティングと定義し、自社製品・サービスのマーケティング部門、広告代理店、制作会社、コンサルティング会社などでWebマーケティングに関わっている日本国内の20代~60代の会社員、会社役員、自営業の方々を対象とし、975名から回答を得た。回答者の属する企業・組織規模と割合は「10名以下 (12.9%)」「11~100名 (20.9%)」「101~500名 (21.3%)」「501~1,000名 (13.6%)」「1,001~5,000名 (13.9%)」「5,001名以上 (15.9%)」。調査期間は2021年月9月14日~10月4日。
・Web制作 (ディレクション、開発、デザイン、ライティング、動画、LPなど)
・Web解析 (Google Analyticsなど)
・SEO対策
・Web広告の運用管理、分析など
・メールマガジンの運用管理、分析など
・SNSアカウントの運用管理、分析など
・MAツールの運用管理、分析など
・マーケティングリサーチ、分析など
・マーケティング戦略、企画全般
メールの配信数の変化
2020年の緊急事態宣言前後で、企業が発行するメルマガの配信数にはどの様な変化があったのでしょうか?メルマガ配信に何らかの形で携わっている方々695名(全回答者の71.3%)から以下の回答を得ました。
全体の約4割弱が、「変化なし(39.1%)」でしたが、「新たに配信を始めた(2.6%)」「増えた(28.6%)」が合わせて全体の約3割強、「配信をやめた(5.3%)」「減った(12.5%)」が合わせて全体の2割弱であり、全体の差分としては1割強程度の企業で配信数が増えたという結果になりました。
業種によって状況が大きく異ると思いますが、BtoBメルマガの場合は対面での営業活動が制限されてしまったため、BtoCメルマガの場合は店舗や施設などでの顧客接点が減ってしまったため、コミュニケーション量を補うための手段としてメルマガ配信が増加したものと考えられます。
それでは、メルマガの配信が増えた企業、減った企業にはそれぞれどの様な特徴があるのでしょうか?
企業規模別のメルマガ配信数の変化
まず、企業規模別のメルマガ配信数の変化について調べたところ、企業規模に比例して増加したことが分かりました。メルマガの配信には、社内で配信可能なリストを保有していることはもちろん、コンテンツの作成・準備などに手間もかかる為、配信頻度を増やす為の各種リソースの多い企業ほど、それが実現ができたという結果なのかもしれません。
また、ステークホルダーの多い大企業では、販売促進としてのメルマガだけでなく、緊急事態宣言に伴う対応の公表や通知など、広報活動としてのメルマガが増えたことも要因の一つかもしれません。
「配信数が増えた・新たに始めた」と答えた回答者の所属企業別割合
企業規模 | 増えた・始めたと回答した割合 |
10名以下 | 20.8% |
11~100名 | 21.9% |
101~500名 | 31.7% |
501~1,000名 | 34.9% |
1,001~5,000名 | 34.3% |
5,001名以上 | 45.0% |
一方、配信数が減った企業の規模に関してはばらつきが見られました。こちらは業種による影響や、従業員の働き方の変化の影響も考えられるため、別項でまとめます。
「配信数が減った・やめた」と答えた回答者の所属企業別割合
企業規模 | 減った・やめたと回答した割合 |
10名以下 | 11.7% |
11~100名 | 13.1% |
101~500名 | 17.4% |
501~1,000名 | 22.5% |
1,001~5,000名 | 22.2% |
5,001名以上 | 16.5% |
業種別のメルマガ配信数の変化
次に、業種別にはどの様な変化があったのでしょうか?前項と同様に、「増えた・新たに始めた」と回答した方の割合を所属企業の業種別に見ていくと、TOP5は以下の様になりました。
「メール配信が増えた・新たに始めた」と回答した業種TOP5
1.農業・林業・漁業・鉱業 (78.6%)
2.電気・ガス・熱供給・水道業 (51.4%)
3.専門・技術コンサルティング業 (45.5%)
4.複合サービス事業 (43.8%)
5.飲食サービス業 (42.1%)
一次産業やインフラ系の業種が1位と2位という結果となりました。元々の配信頻度自体が低かったことや、大規模な会社が多いため関係者などへの通知を行う為のメール配信が増えたのではないか?と推測はしているものの、当社内に比較できるデータが少ないため、その理由について十分な考察が行えませんでした。
3位~5位については、顧客との対面でのコミュニケーション・接触機会を補うために、また特にサービス業では営業状況の通知などで顧客・会員へのメルマガ配信数が増えたものと想定されます。
尚、メール配信が減った業種については、ランキング化できるほどの大きな偏りが見られませんでした。比較的多かった宿泊業(33.3%)、不動産業(30.4%)、また旅行業を含む生活関連サービス・娯楽業(33.3%)などは緊急事態宣言による移動制限の影響で、販売促進自体を行えなかったためと想定されます。
SNSマーケティングの変化
メール配信と同様に、顧客との主要なコミュニケーション手段としてSNSアカウントの運用が挙げられます。2020年の緊急事態宣言前後では企業が運用するSNSアカウントの運用にはどの様な変化があったのでしょうか?。
まず、SNS施策に費やす業務量の変化について調べたところ、「増えた・始めた(23.7%)」、「以前と変わらない(38.2%)」、「減った・やめた(14.3%)」、「もともとやっていない(22.4%)」、「わからない(1.4%)」となりました。
*Twitter、Facebook、Instagram、Pinterest、Youtube、LINE@、TikTokの6つを対象に調査
SNS運用業務量の変化 (6つのSNS計)
回答 | 割合 |
増えた・始めた | 23.7% |
以前と変わらない | 38.2% |
減った・やめた | 14.3% |
もともとやっていない | 22.4% |
わからない | 1.4% |
メルマガと同様に4割弱が以前と変わらないという回答でしたが、「増えた・始めた」と「減った・やめた」の差し引きでは約1割程度の企業でSNSに関する業務量が増えた様です。
個別のSNSとしては、「増えた・始めた」で多かったのは「Youtube (29.9%)」、「Instagram (27.9%)」、「Twitter (27.6%)」などが同程度で多く、「減った・やめた」で多かったのは「Facebook (19.4%)」という結果となりました。
特にYoutubeについては、対面のコミュニケーションを補う為、情報量の多い動画メディアを活用する企業が増えたものと考えられます。また、それら動画の拡散方法としてTwitterやInstagramが活用されたものと考えられます。
メルマガにおいてもYoutube動画へのリンクが入ったコンテンツが増えている傾向にあり、ぜひ動画を作成されている企業様にはメルマガへのYoutube動画コンテンツ掲載もご検討いただけたらと思います。
関連FAQ:メールやランディングページに動画を挿入する方法
ちなみに当社も緊急事態宣言以降、会場型のイベントが開催できなくなったことから、以前は会場型のセミナーやワークショップでお話していた内容を動画コンテンツにまとめて、Youtubeチャンネルにアップロードするという取り組みを始めたため、Youtubeに関する業務時間が増えました。また、新しい動画が増えたことや、その為に作成したスライドで役立ちそうなものを切り抜いてTwitterアカウントなどSNSで投稿するようになった為、今回の調査結果とほぼ同じような状況となっています。
Webマーケティング業務全般の変化
次に、具体的な業務分野別に、Webマーケティング業務に変化があったのか?について調べてみました。
(2020年4月の緊急事態宣言前後での分野別業務量の変化:全体)
全体的に「変わっていない」が一番多い結果となりました。「マーケティング戦略、企画」「マーケティングリサーチ、分析など」といった、方針決定に関わる業務が比較的増えていますが、これは緊急事態宣言下で戦略の見直しや調整を行った企業が多かったためかもしれません。
再び当社の例で恐縮ですが、私たちも上述の通りリアルのセミナーをオンラインに切り替え、それに伴ってWebマーケティング施策の中でも動画やSNSの比重を増やしたという経緯があり、マーケティング企画やその分析の時間が増えました。また、当調査の様に、マーケットにどの様な変化があったのかを調べるための調査も増やしたため、全体的にこの結果に近い傾向があったと感じています。
また、次項で挙げる出社日数の違いと、各業務量の増減については特に相関関係は見られませんでした。これは、Webマーケティング業務自体がオンラインで完結することが多いことと関係しているのかもしれません。
在宅勤務・リモートワークと出社頻度の変化
今回の調査では、メルマガの配信に関わるWebマーケターの方々の、緊急事態宣言前後での働き方の変化についても調査を行いました。大きな変化の一つに在宅勤務の推進があり、社内のコミュニケーションにも大きな影響を与えたものと推測されます。
本調査が、もともと在宅勤務・リモートワークを導入しやすい分野であるWebマーケターの方々を対象としたものであるため、以前から部分的に導入している企業が多かったことがわかります。それがさらに、Slack、Chatwork、Teams、Zoomなど様々なコミュニケーションツールの普及が進んでいた中で、緊急事態宣言によってさらに推進されたという状況かと思います。
では、具体的にどの程度の変化があったのでしょうか?
まず、2020年4月月前以前(緊急事態宣言以前)の、Webマーケティング従事者の一週間当たりの出社日数は以下の状況でした。
(2020年4月月前以前-緊急事態宣言以前の週当たり出社日数)
約半分の企業では毎日出社していた状況であったものの、残りの半分では部分的に在宅勤務・リモートワークが取り入れられていたことが分かります。
一方、2020年4月以降(緊急事態宣言以降)では、Webマーケティングに従事されている方々の一週間あたりの出社頻度は以下の割合となってる様です(2021年10月時点)。
(2020年4月以降-緊急事態宣言以降~現在の週当たり出社日数)
最も分かりやすい比較では、「週1日未満オフィス出社」、つまりほぼ完全在宅勤務・リモートワークだった方々の割合は、緊急事態宣言前後で6.8%から12.8%へと約2倍に増えたのと同時に、「週5日オフィス出社」、つまり毎日オフィスへ出社していた方々は、47.4%から27.9%へと半数近くにまで減少しています。
「週5日以上(27.9%)」と、約3割の方が毎日出社されている一方で、「週4日以上(18.1%)」、「週3日以上(23.4%)」、「週2日以上(11.2%)」「週1日以上(6.7%)」と、約6割の企業が部分的に在宅勤務・リモートワークを取り入れていることが分かりました。また、ほぼ毎日在宅勤務・リモートワークと考えられる「週1日未満(12.8%)」も1割強いらっしゃいました。
それでは、在宅勤務・リモートワークの比率と企業規模や業種に相関関係はあるのでしょうか?
まず、企業規模別に見た出社頻度の結果に大きな偏りは見られませんでした。次に、緊急事態宣言後に、「週1日未満オフィス出社」、つまりほぼ完全に在宅勤務と回答した方々の所属企業の業種を調べたところ、「情報通信・インターネットサービス業(28.4%)」「専門・技術コンサルティング業(27.3%)」「広告代理業(26.7%)」の3つは突出して高い結果となりました。
リモートのコミュニケーションが成り立ちやすいビジネスである点や、特に「情報通信・インターネットサービス業」は以前から在宅勤務・リモートワークが普及している業種であり、それがさらに加速したものと考えられます。
一方、緊急事態宣言後も週5日出社を続けている業種としては、「医療,福祉業」「宿泊業」等が突出していましたが、これらの業種はその性質から想定通りの結果となりました。
しかし、これら特定の業種を除いた業種間で大きな偏りがある訳ではなく、全体としては、組織の規模や業種よりも、経営層・上司の判断が在宅勤務頻度に大きく影響しているのかもしれません。
おわりに
今回の記事では、緊急事態宣言前後でのメルマガ配信数やSNS業務の変化、在宅勤務・リモートワークの割合などについて一部をご紹介しました。直接皆様のメール配信業務に役立つ内容ではないかもしれませんが、ご参考にしていただけたらと思います。
より具体的なWebマーケターの方々の抱える悩みや変化については別の記事でまとめたいと思います。