自社ビジネスに貢献するための、効果的なメールマーケティングを行うためには様々な力が必要です。目標と現状とのギャップの認識。目標に到達するために必要なものごとの見通し。様々な制約や条件下で施策を取捨選択する判断など。
こうした力の養成を目的に、2018年9月に開講した「メールマーケティング担当者のためのプロジェクト力養成講座」。
今回、児童英語教材・書籍の出版を行っているアプリコット出版株式会社の山口靖代表取締役と、第2期講座(2019年3月~5月)を受講された上江洲里枝さんにお話を伺いました。
目次
ユーザーから生まれた教材だからこそ、つながりを充実させたい
●創業の経緯とデジタルマーケティングに取り組み始めた理由について教えてください
【山口】
弊社は、医療関係のグループ会社のなかで、当時ほとんどなかった国産の子ども向け英語教材と教授法の研究会支援と、そこで開発された英語教科書制作事業がきっかけでスタートしました。創業が1959年で60年以上経ちますが、グループ会社から独立したのが2009年になります。グループから独立して5年目以降、事業を少しずつ拡大していくフェーズに入りました。
私たちが英語教材の研究会からスタートした経緯があるからだと思いますが、出版社としてはめずらしく、ユーザーである塾や学校の先生と直接つながっています。自社の教材をどんな方が、どのように使っているのかを理解して、現場に即した教材開発をしていくことを、会社の存在価値としてとても重視しています。
そのための施策として、メールやSNSを通じたお客様とのつながりを充実させていきたいと考え、動き始めたタイミングで上江洲さんが入社しました。
【上江洲】
私が入社したのは2018年9月です。大学卒業後、資産運用会社で調査業務を担当し、投資銀行のM&Aアドバイザー、国際機関でアドミの仕事などを経験し、この先どうしていこうか考えていたころに、個人的なつながりで声をかけていただきました。
【山口】
今、限られた少人数で回しており、一人一人が色んな仕事を兼務していますが、上江洲さんには広報業務やメールマーケティング、SNSでの情報発信などを担ってもらっています。
●Benchmark Emailはいつ頃からお使いになっていますか?
【山口】
メルマガの取り組み自体はもう少し古くて2010年くらいから始めていました。(塾などの)先生方はスクールが隣近所にあるとライバル関係になってしまうということもあって、なかなか教材の活用方法などの情報共有がされにくくなっています。そこで私たちのような存在がこうした情報を発信して、教材活用の提案やアドバイスなどを行ってきました。
ただ、当時は画像一枚挿入するのにもどうやればいいかわからない状態で、どのくらいのボリュームのメルマガを書けばよいのか、どのくらいの頻度がいいのかといったことも手探りで行っていました。また、10年前というのはSNSはもちろん、先生方がメールを定期的に見るという習慣がなくて、定期配信と言いながらも3ヶ月に1回配信すればいい方で、へたをすると半年に1回というときもありました。その後、自社サイトの制作や更新を依頼している企業の方からBenchmark Emailをお勧めされて、2016年から使い始めました。
配信の定期化が開封率向上に繋がった
●上江洲さんが加わってからどのようにしてメールマーケティングを行われたんでしょうか?
【上江洲】
まずはメルマガを配信できていない状況を改善するために、必ず月1回は配信するということにして、年間カレンダーを作成しました。
以前は配信するときどきで掲載する情報量に差がありました。多いときは10個近くのトピックがあったんですが、それを毎月定期配信するのは難しいため、メルマガのトピックは3つにまとめることにしました。一つ目は会社としての動きやニュース。二つ目は商品紹介。三つ目は先生に役立つような情報。こうやって絞り込みをして整理した上で、商品によっては「この時期に伝えたい」というネタがあるので、前もって書けるものは事前に書く、というようなことを一生懸命やっています(笑)
【山口】
なぜ定期的に送れていないのか。言いたいことを詰め込み過ぎているからじゃないかといったことの分析から始まって、内容をカテゴライズするなど、段階をふみながら進めていってくれたと思います。
お客さんから「すごい定期的に来るようになりましたね」とか、次回の内容、楽しみにしています」「今までそういうものは来てなかったけど、来るようになったので真剣に見ています」といった声が届くようになりました。
お客さんはメールを見る習慣がないからって、お客さんのせいにしていてはいけなくて、やっぱり定期的に開封していくように誘導していくのは自分たちなんだ、ということが改めてわかりました。
実際に配信されたメールマガジン
(クリックして表示されない場合はこちら)
プロジェクトの全体像を可視化するフレームワーク
●プロジェクト力養成講座に参加されたのはどういったタイミングだったのでしょうか?
【上江洲】
経歴上、ITやSNSのことがあまりよくわかっておらず、HTMLメールとテキストメールが違うものということすら理解していなくて、それで失敗をしてしまうようなことがありました。Benchmark Emailは使いやすいものの、基礎知識からちゃんと学ばないといけいないと思っていたときに、社長から「こんな講座があるよ。いいんじゃない?」と勧められました。
実際に行ってみたらBenchmark Emailの操作方法などではなく、プロジェクトの進め方がテーマだったんですが、会社としてメールマーケティングやSNSマーケティングを行っていくうえで、その進め方をどうしていくかということも課題だったので、色々と学ぶものがありました。
●受講後にプロジェクトは進みやすくなっていますか?
【上江洲】
プ譜を使うことで、目標に対してそれを実現するための施策を考えて、実行に落とし込んでいく過程で、考えた施策がちゃんと目標に結びついているかが明確になります。
その目標の実現に関係のない施策は採用しないとか後回しにするといったことの判断ができるようになったと思います。自分たちの行動は何のためにやっているのか。それをいついつまでにやるのか。想定と違ったとき、次に何をやるかといったことがクリアになるので、社内でもすごく説明しやすくなりました。
見える化するのは大切な事です。社内の他のメンバーにプ譜を見てもらうことで、「じゃあこういう施策があるんじゃない?」といったアイデアの共有や個人個人の知識を入れこむことができるので、このフレームワークを得られて本当に助かっています。
実際に作成されたプ譜
ワークショップ内容とプ譜について詳しくはこちらをご覧ください。
メール配信の施策からゴールまでを可視化する。プロジェクト力養成ワークショップを開講!
●実際にどんなことがあったのでしょうか?
【上江洲】
メルマガ登録数を増やすことを目的に10%クーポンの提供を行っていたんですが、これは目標数値には届きませんでした。その後、購入していない購読者をセグメントして「クーポンを見逃していませんか。もったいないですよ」というメールを送ったものの、これも効果がありませんでした。
【山口】
時期的なものもあるかも知れません。先生方の意識が向いているのは、教材を探す年度替わりのタイミングなんですね。この時期に出版社の情報を一番気にします。年明けから4月までの間は、何をやっても先生たちの反応が早いというか敏感です。その後、スクールが始まって、ある程度落ち着いてくると、アプリコット出版のホームページすらあまり今は見ないようになります。施策がうまくいかないのはそういう時期・タイミングの影響もあると思います。
【上江洲】
一人当たりの購入単価は前年比と比べても高くなったんですけどね。本来あまり購入されない時期に購入いただけるのはありがたいです。
ただ、これは本来の目的ではないので、そこに引っ張られてそもそもの目的を忘れないよう、振り返ったり足元をちゃんと見るという意味で、プ譜が役立っています。
今後のメール活用
●開封率などメール配信後の分析はどのように行っていますか?
【山口】
毎月定期的に行っています。開封率も登録者数も、上江洲さんが担当になってから数字はずっと右肩上がりです。開封率だけでいえば、17%から20%を超えるようになってきました。
これまで登録されていたアドレスが無効になっていて、メールが未達になっていることも解析ツールで確認してリストの整理をしています。
●今後、Benchmark Emailを使って実現していきたいことについて教えてください
【山口】
紙のDMというのはコストパフォーマンスを考えると、あまり良い方法だと思っていません。お知らせしたいことはどんどん増えていきますし、一度にたくさんの情報を送ってもお客さんは本当に観るんだろうか?と。こちらからお伝えしたいことは、一番良いタイミングで、適量をお知らせするというのがいいと思うので。
極論、紙のDMをメールに変えたいぐらいなんですね。このあたりの切り替えにかかるコストや影響などはまだ試算していないですが。将来的にそうした状況にしていくために、登録を促すパンフレットやリーフの制作、イベントでの配布、DMへの封入などを行っています。
そういう意味では、今はDMのメール移行へ向けた意識付けの段階ですね。
【上江洲】
講座参加中にアイデアを頂いた、アンケート施策(アプリコット出版の好きなところ、価値を感じることなどをアンケートで聞いて、自社の顧客像をより明確にし、メルマガコンテンツの作成や開封率の向上などにつなげる目的で実施)を実際に行ってみて、私たちが想定しなかったような答えを頂くことがありました。
ユーザーと直接つながっている、ユーザーとの距離が近い出版社として、今後も役に立って、効果のあるメールをつくって配信していきたいと思います。
(インタビュー/文:前田考歩)
次回の講座開講はニュースレターにてお知らせします。
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プロジェクト力養成ワークショップ参加者インタビュー:株式会社繊研新聞社