*本記事は、2016年8月に公開した記事に統計情報のアップデートを追記したものです。

みなさんこんにちは、コンテンツ担当の伏見です。

今やホテルやショップ、はたまた展示会などでも海外からのお客様を受け入れることが当たり前になってきましたね。

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計によると、2016年5月の時点で50万人以上もの方が中国からやってきているそうです。(国別来日客数トップ。台湾はついで37.6万人)。*2018年8月の時点では、中国からの訪日者は86万人に増加。当然、中国の方のメールアドレスを取得する機会も増えているかと思います。

そこで今回は中国のお客様へメールマガジン配信を考えている方に、中国国内のメール配信事情についてBenchmark Email China & Taiwan のセールス&マーケティング責任者でカントリーマネージャーの美蓮(メイリン)を訪ね、直撃インタビューを行いました。

中国ではコンテンツの取り締まりが厳しい

Benchmark Email China 責任者の謝 美蓮

中国では2016年3月10日より、新たに外国企業のインターネットコンテンツ配信を禁ずる規定を施行されたのをご存知ですか?これによると今後以下のような配信が禁じられるそうです。

”外国企業、および外国企業と中国企業の共同事業や合弁会社からテキストや地図、ゲーム、アニメ、オーディオ、ビデオといった様々なコンテンツをオンライン配信することが禁じられる。電子化された書籍や、芸術・文芸作品なども対象に含まれる。”

しかし、メールマガジンについては対象外となるので、積極的に中国のお客様とのコミュニケーションを行うには最適なツールです。

ですが、同時に中国でのメールマガジン配信には大きな問題が存在します。それはメール不達の問題です。送ったメールが届かないという状況が日本よりも多く起きているのです。

One to Oneのメール配信のケースですが、事実中国ではGmailの利用が制限されており、日本からGmailのアドレスでメールを送った場合、送れないといった状況が度々起きているそうです。

その多くが、中国で利用されているドメインのセキュリティーの高さが原因なのです。

中国で人気のメッセンジャーアプリ「QQ」のドメインは全てのメールをブロックするって本当?

ここに、1つの例をご紹介します。

皆さんはテンセントQQ(俗にQQ=キュウキュウと言われている)という中国のサービスをご存知ですか?中国では数億人規模でアカウントを作成されている大人気のメッセンジャーアプリで、チャットはもちろん、通話ができたりスマホアプリで決済も出来るなど、中国版Lineのようなサービスです。

またこのアカウントを持つことで、QQドメインのメールアドレス(@qq.com)を取得することができるそうです。

インタビューの中でメイリンが対中国配信で気をつけないといけない事として挙げていたのがこのqq.comであり、独自で厳しいセキュリティーシステムを導入して、受信に大きな問題を及ぼしているそうなんです。

メイリン曰く、中国でおおよそ90%以上の人がこのドメインを活用しているそうなのですが、qq.comへの配信はその90%以上がエラーとなってしまうとのことです。(それだけ国内でのチャット利用が生活に根付いているとも取れますが)

メイリンは中国国内での企業からのメールマガジンというのは、日本ほど浸透しておらず、スパムになろうとお構い無し、メールをただ送って終わり!というのが現状なのだと語っていました。(もちろん、中国国内でメールマガジンを配信しているすべての企業がこのような運用を行っているということではありません。)

このような環境下だからこそ、サイバー犯罪の被害を防ぐためにQQは独自のセキュリティーを設けているのかもしれません。

Benchmark Email Chinaで独自に調査した結果、以下のような状況下でqq.comへの配信は全てエラーになってしまうことがわかりました。

  1. 一度に多数のメール受信を行った場合
  2. アドレスの打ち間違いや、無効なアドレスに送信している場合
  3. メールの容量が著しく重たい
  4. 1度の配信で、同じサーバー(IPアドレス)からの送信数がQQが定めた規定数を超えている場合(QQは毎分、毎時間、1日の間隔で配信上限をチェックしており、これらのどれかでも規定を超えた場合、配信はエラーとなります)
  5. メールの内容が大量配信向けの内容(メールマガジンなど)と見なされた場合

これだけ見ると、日本における携帯への配信に対するセキュリティー対策とそれほど大きくは変わりませんが、90%のメールがブロックされているという事実を見ると、セキュリティーの厳しさは日本のそれとは比べものにならないのかもしれません。

中国からのお客様のメールアドレスを取得するときには注意深くチェックし、QQドメインではなく会社ドメインのアドレスなど別のものを受け取るといった打開策を取るようにしましょう。

またBenchmark EmailではKickboxというツールを導入しエラーアドレスを見分けるサポートを行っています。エラー配信になるアドレスをリストから省くことで配信到達率を改善させることが見込めます。

※中国のポータルサイト、「網易」が提供するドメイン(@163.com、@126.com)でも同様に配信によるエラーを引き起こすそうです。

そもそも中国でメールマガジンは読まれているの?

先にも述べましたが、中国でのメールマガジン配信は大多数が「ただ送ってそれでおしまい!」という状況です。残念ながらメールをマーケティングツールとして活用するという文化はまだ根付いていないそうです。

これだけ聞くと中国でメールマガジンは不必要?とネガティブな印象を受けるかもしれませんが、中規模以上のビジネスともなると、やはりその重要性は必然と言えるでしょう。

費用対効果を考えても雑誌の1ページに広告を掲載するよりもリーズナブルである事、また中国という広大な土地でビジネスをする以上オフラインでのマーケティングだけではリーチできないということも事実です。

合わせてメイリン率いるBenchmark Email ChinaはHTMLメール配信により、誰が開封したかといった効果が目に見える事が効果検証にも役立たせるというマーケティング的な考え方の普及に邁進しており、数年後には中国でも環境に変化が起きているかもしれませんね。

中国でもメールマガジンのデザインはシンプルなものが好まれ始めてきている

ところで中国で好まれるデザインとはどういうものでしょう?

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上記はBenchmark Email Chinaのデザインチームが作成した中国向けメールマガジン用テンプレートです。とても洗練されたデザインです。

少し前までは赤や金色を背景に活用したいかにも中国らしいデザインが流行っていたようですが、欧米からの影響もあり、こういった落ち着きのある見やすいものを配信する企業が増えてきているとのこと。

ちなみに今年に入って、欧米ではGIFや動画をメールマガジンに活用することがトレンドになっていますが、中国ではその流れはまだないそうです。

(日本ではこのトレンドの流れは徐々にきていて、GIFを使ったメールマガジンを配信している企業もあります。関連ブログ:「動く画像(GIFアニメーション)」を活用したメール配信で読者を惹きつけよう

また、日本でもすっかりお馴染みとなったモバイル端末などにも対応したレスポンシブデザインは中国でもマストだそうです。

2015年のデータでは中国でのスマホの普及率は74%と世界で15番目に高い普及率。スマホでのインターネット利用者数は6億2000万人。台湾でのスマホ普及率はさらに上を行く78.3%となっています。*2017年の調査でも、中国のスマホ普及率は15番目に高く、日本を上回っています。

【参照元】
スマホ普及率、韓国は83.1%で世界4位、中国は74%で15位―韓国メディア

スマホ普及率で韓国が世界一、中国は15位

さいごに

今回、メイリンのインタビューで現地の生の声を聞くという貴重な経験をさせてもらいました。現状では中国への配信にはエラーが多く、そのサポート対応に追われているとメイリンは語っていました。

それはメール配信サービス1つの努力だけでは改善できない問題であり、現地のドメインセキュリティーの問題やメール配信する人のマナーの問題など、課題は様々です。

そういった環境を少しでも改善するため、Benchmark Email Chinaでは現在Paypalと共同でセミナーなど様々な活動を行い、環境改善に努めています。

Shanghai Paypal Training class #2 2016.5-2.6中国のPaypalオフィスで行われたメールマーケティングセミナー

現状では日本から中国へのメール配信において送ったメールが必ず届くのか、というところは未知数ではありますが、インバウンドで獲得した中国のお客様との関係を築いていくにはやはりメール配信が効果的なのではないかと思います。

Benchmark Emailでは今後も他国チームと連携し、メール配信のグローバル事情を随時ご紹介できればと思っています! では、また。

参考文献
中国のネットユーザーは6億8800万人、総人口の半数を超える~うち9割がスマホなどモバイル利用