
※本記事の内容は、2025年8月時点の情報です。
近年、生成AIや機械学習の進化により、私たちの仕事や生活にAIが深く関わるようになりました。
メール業務も例外ではなく、以前からスパムの自動分類や返信候補の表示など、AIを活用した機能が導入されています。特に最近は、Google Geminiのような「生成AI(Generative AI)」の登場により、再び注目が集まっています。
ビジネスパーソンにとって、メールの処理は日常的に欠かせない業務のひとつです。しかし、AIを上手に活用すれば、メールに割く時間を大幅に短縮し、他の業務に充てる時間が増えるはずです。
本記事では、最もAI機能が充実しているGmailを中心に、Outlook、Yahoo!メールに搭載されているAI機能の概要や使い方をご紹介していきます。いずれも実務に活かせる機能ばかりなので、ぜひご自身の業務スタイルに合わせて試してみてください。
目次
メールに使われるAIの種類と役割
メールソフトに搭載されているAIは、近年大きく進化しています。特に注目すべきは、以下の2つのタイプのAIが活用されている点です。
・機械学習型AI
スパム判定や自動分類、返信候補の表示など、過去のデータからパターンを学習して処理を最適化するAIです。
・生成AI
ChatGPTやGoogle Geminiのように、入力された情報から文章を生成することが可能です。メールの要約や返信文の自動生成など、より高度なアウトプットが可能です。
従来のAIは「整理・分類」といった業務補助が中心でしたが、生成AIの登場により、メールの作成や意思決定の補助まで担うようになってきました。
GmailのAI機能
Gmailで使える従来のAI機能
Gmailは、長年にわたりAIを活用してメールの利便性を高めてきました。
最初に、GmailがGemini搭載前より提供していた代表的なAI機能をご紹介します。
1. スマートリプライ
Gmailでは、受信したメールの内容に応じて、短い返信候補(例:「ありがとうございます」「了解しました」)を自動表示してくれます。候補をクリックすると、返信画面が開き、その文章が自動で入力されます。
スマート返信は日本語に対応しておりますが、そのまま使えるような長さの返信文章の提案はされないため、あまり実用的ではないかもしれません。
2. 自動分類(カテゴリ別タブ)
Gmailは、受信メールを「メイン」「プロモーション」「ソーシャル」などのカテゴリに自動分類します。重要なメールを見逃しにくくなり、メールチェックの効率が向上します。
タブの表示は、「設定」>「受信トレイ」よりカスタマイズが可能です。
参照:Gmail で受信トレイのカテゴリを追加または削除する
3. 概要カード
航空券やホテル予約、注文確認メールなどにおいて、本文上部に要点(日時や商品名など)がカード形式で表示される機能です。
公式サイトによると、「概要カード」を表示するには、以下の設定をオンにする必要があります。
・Gmail、Chat、Meet のスマート機能
・スレッド表示
4. リマインダー機能(ナッジ機能)
Gmailのリマインダー機能・ナッジ機能は、返信し忘れたメールや、返事が来ていない送信メールをGmailが自動でピックアップして、受信トレイの上部に再表示する機能です。
例えば、返信を忘れていたメールや、数日間返信がなく対応が必要そうなメールなどが受信トレイの上部に表示されます。
「設定>全般>アクションの提案」をクリックし、以下それぞれにチェックを入れることで利用が可能です。
・返信するメールを提案
・フォローアップするメールを提案
これらの機能はいずれも、生成AI登場以前からGmailに搭載されていたもので、機械学習を活用した先進的な仕組みといえます。すでに多くの方が、無意識のうちにAI機能を活用していたのではないでしょうか。
生成AI「Gemini」によるGmailの新しいAI機能
2024年より、GmailではGoogleの生成AI「Gemini」が統合され、従来の機械学習ベースの機能に加えて、さらに高度なAI支援が可能になりました。この統合により、メールの処理や作成が一段と効率的になったのはご存知でしょうか。
ここでは、日本語で利用可能なGeminiのAI機能を、Googleの公式ページに記載されている情報に基づいて紹介します。
*Geminiは、Gmail画面右上の「Gemini」アイコンからアクセス可能です。
1. メールの要約
要約機能では、長いやり取りが続いているメールを、Geminiが数行に要約してくれます。重要なポイントだけを素早く把握したいときに便利です。
(使い方)メールスレッドを開いた状態で「Gemini」をクリックし、「このスレッドを要約」を選択します。
ワンクリックで長文のメールを要約してくれるので、要点だけ掴みたい時に活用するといいでしょう。
2. 返信文の自動生成
この機能では、返信メールの下書きをAIが自動で生成します。要点やトーンを入力するだけで、丁寧な返信文やビジネス文面に整えてくれます。
(使い方)返信画面で「文書作成サポート」をクリックします。
トーンや簡単な返信内容を記載すると、メールの下書きが作成されます。
出力された内容を元に、さらにブラッシュアップすることも可能です。
こちらの返信文章を作成する機能は、日常的なメール業務の効率化に便利で、1からメール文を作成するよりも格段に業務スピードが上がります。また、文章も比較的自然で使いやすいと感じたので、メールを日常的に送っている方はぜひ一度試してみてください。
ここからは、「Gemini」のアイコンをクリックしてサイドバーを開き、チャット欄に様々なキーワードを入力することでご利用いただける機能をご紹介します。
3. 過去のメールから情報を検索
予約やフライト、荷物などに関する情報を過去のメールから取得できます。
4. 特定の種類のメールを検索
特定の期間の、特定の送信者からの未読メールを検索できます。例えば、「今週の未読メール」「今月の〇〇様からのメール」などを抽出することが可能です。
5. Googleドライブのファイルから情報を検索
「今朝共有された資料の要点を教えて」などの入力で、Googleドライブ内のファイルを横断検索し、必要な情報を引き出せます。
6. Gmailの使い方を聞く
「下書きはどこに保存されてる?」などの基本的な操作も、Geminiに質問すれば回答をしてくれます。不明な点があれば、Geminiに聞くと答えてくれるので便利です。
7. ウェブから質問する(検索代替)
Gmailからそのまま「今日の為替相場は?」など、日常的な調べ物もGeminiで可能です。外部のブラウザに切り替える手間が省けます。
※ウェブから回答を取得するには、「Google検索を使用して」などのフレーズを含めてください。
8. 予定に関する情報を取得・作成する
「明日の会議予定を教えて」「会議を金曜の10時に設定して」など、カレンダー連携をスムーズに行うことができます。メインカレンダーの情報を取得したり、スケジュールをすることが可能です。
9. Geminiで画像を作成する
プロンプトを入力すると、AIが画像を自動生成してくれます。社内報や資料作成時のイメージ素材にも活用できます。
利用条件とプラン
Geminiは、Google Workspaceの一部として提供されており、Google WorkspaceのBusiness Starter(機能の制限あり)またはBusiness Standard以上のプランが必要です。導入を検討している方は、まず会社のプラン状況を確認することをおすすめします。
詳しくはGoogleの公式ページをご確認ください。
Outlookの生成AIの機能
Microsoft Outlookには、「Copilot(コパイロット)」と呼ばれる生成AI機能が統合されています。これはメールだけでなく、WordやTeamsといったMicrosoft 365の他アプリとも連携しながら動作します。
Microsoftの公式ページによると、Copilot in Outlookでは以下のような支援が可能とされています。
Outlook Copilotの主な機能
1.メールスレッドの要約
複数のやり取りがある長いスレッドを、重要ポイントの要約として表示。非常に効率的に内容を把握できます。
参照:Outlook で Copilot を使用してメール スレッドを要約する
- メール下書きの自動生成
件名や要旨を入力するだけで、過去のメール文脈や組織情報をもとにAIがメール本文を生成します。Microsoft公式でも「スレッドのコンテキストと組織の情報に基づく下書きを生成」と明記があります。
参照:Outlook で Copilot を使用してメール メッセージを下書きする
3.メールコーチング
トーンや明瞭さ、文調などの改善提案を受け取れます。提案はメールに適用可能で、送信前のレビューに便利です。
参照:Outlook で Copilot を使用したメール コーチング
4.Copilotチャットとの併用
Outlook画面の横にチャットウィンドウが開き、質問や操作が可能。コンテキストに応じた情報取得やアクション指示が行えます。会議のスケジュール調整などもこちらから行えます。
利用条件とプラン
上記の機能を利用したい場合、企業ユーザーの場合は、Microsoft Copilot for Microsoft 365への加入が必要です。料金についての詳細は、Microsoftの公式ページをご確認ください。
また、個人ユーザーの場合は、月額3,200円のCopilot Proに加入する必要があります。
Yahoo!メールの生成AIの機能
Yahoo!メール(日本版)では、GmailやOutlookのような大規模な統合はないものの、「AIで下書き生成」機能が順次提供されています。「AIで下書き生成」機能はメールの本文をAIが自動生成してくれる機能で、無料で試すことが可能です。
(使用方法) ※今回はYahoo!メールのスマホアプリ版を利用
以下のようにメール作成・返信画面で「AIで下書き作成」とでている場合は、クリックをします。
以下の画面に移るので、作成したい内容の要点を入力します。
AIが作成した文章がメール作成・返信画面に反映されます。この文章を元に、内容に過不足があれば手直しを行うことが可能です。
※利用回数には上限があり、順次提供のため、全ユーザーに表示されるわけではないようです。メール作成または返信時に「AIで下書き生成」ボタンが表示されていれば、利用が可能です。
尚、現時点では、GmailやOutlookのような以下の機能はYahoo!メールには搭載されていません。
・メールの要約
・トーンや文体の調整
・カレンダーとの連携による予定作成
・外部ファイルやWeb検索と連動した文脈抽出
ただし、Yahoo! JAPANの他サービス(Yahoo!ニュースや知恵袋など)では、生成AI活用の試みが増加しているため、今後は搭載されることが期待されています。
参照:AIで下書き生成機能とは – Yahoo! JAPANヘルプセンター
メールソフト別・生成AI機能の比較表(2025年8月時点)
AI機能を利用する時の注意点
AIによるメール作成や返信補助は非常に便利ですが、当然、すべてをAI任せにするのは危険です。特にビジネスの場では、誤解やトラブルにつながる恐れもあります。ここでは、実際に利用するうえで意識しておくべき注意点を解説します。
✅ 自動返信はあくまで「提案」最後は人の目でチェックを
AIが提案してくれた内容が不適切な場合もあります。送信前には必ず確認し、自分の意図に合っているかをチェックしましょう。
✅ 要約は万能ではない
長文の要約は便利ですが、文脈が省略されたり、意図が歪んだ形で抽出されることもあります。要約された情報を鵜呑みにせず、必要に応じて原文を確認しましょう。
✅ 有料プラン限定機能に注意
多くの生成AI機能(GmailのGemini、OutlookのCopilotなど)は無料プランでは利用できません。会社のプラン状況を確認してから使い始めることをおすすめします。
✅ 個人情報・機密情報の扱いに注意
AIに入力した内容は、場合によっては学習やログ記録の対象になる可能性があります。特に、個人情報や社内機密を含むメールは慎重に扱いましょう。
まとめ
本記事では、主要なメールサービスである Gmail・Outlook・Yahoo!メールに搭載されたAI機能について、機能や使用例をご紹介してきました。
AIは、メールの作成や返信、要約といった業務を効率化してくれる非常に便利なツールです。ただし、提案された内容を鵜呑みにするのではなく、自分の意図に沿っているかを確認し、正しく使うことが重要です。
使い方を理解し、自分の業務に合ったAI機能を上手に活用すれば、日々のメール業務がずっと楽になるはずです。ぜひ、自分に合った方法でAIを取り入れてみてください。