こんにちは。遠藤です。Benchmark Emailを利用しているユーザーの方に、お話を伺うインタビューシリーズです。今回お話を伺ったのは、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」を運営する株式会社INITIALの松岡さんです。

INITIALのメール施策概要

メール配信を行っているサービス名:INITIAL
対象:スタートアップ企業に興味がある人

主な配信コンテンツと頻度:
資金調達の情報とINITIALでリリースしている記事のお知らせ(1回/週)

担当組織:
メールマガジンの担当者:1人

スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」

 

INITIAL(イニシャル)は、データとストーリーからスタートアップの現在と未来を紐解く独自のコンテンツを提供している、スタートアップ情報プラットフォームです。元々は、entrepedia(アントレペディア)という名称でサービスを展開していたのですが、2019年11月に社名変更を行いました。

資金調達レポートやスタートアップ成長モデルなどを公表しているほか、法人版では収録数1万社超のスタートアップデータベースを提供しています。現在は、事業会社、VC、金融機関などを中心に、300社以上の導入実績があります。

メールマガジンのユーザー層

INITIALのサービスページに設置しているメルマガ登録フォームからご登録いただけます。購読をしてくださっている方々は、スタートアップ企業の情報への興味が強い方なので、セグメントは分けずに、満遍なく情報を配信しています。

配信コンテンツ

資金調達の情報とINITIALでリリースしている記事のお知らせ

配信頻度:週に1回
配信時間:水曜日の午前中
内容:メルマガ限定情報と、注目記事のサマリー

掲載要素はふたつあり、ひとつはメルマガ限定情報です。
過去1週間における大型資金調達の一覧と、興味深い事業提携のお知らせをしています。メルマガ限定掲載として、紹介企業の社長にコメントをいただくこともあります。

ふたつめは、ウェブサイトで発信している注目記事のサマリーです。
メルマガ用に記事の概要を書き下ろしており、「サイトまで訪れなくても、おおよその内容が分かる」というメリットがあります。
INITIALでは、1週間に2〜3本の記事配信がされますが、メルマガで紹介するものは、そのうちの1本に絞り内容を濃くしています。

メルマガは「INITIAL」のファンになっていただくための、きっかけ作りだと思っています。
私たちのコンテンツに日々触れてもらうことで、メルマガを購読するメリットを読者の方々に提供するようにしています。

運用と設計について

メールマガジンでみているのはオプトアウトの数

━メールマガジンの効果測定では、どんな数字をみていますか?
どれくらいのお客さまに継続購読をしていただいているかを最重視し、効果計測では「オプトアウト数」を見ています。

本体ページへの遷移率やクリック率も見ているのですが、オプトアウトの数をどれだけ減らしていけるかというところが一番ですね。法人向けプランがあるとご紹介しましたが、契約の獲得よりも、スタートアップ企業に興味を持っていただくことを目標にしています。お客様に使い続けていただくためには、継続して購読してもらうことが重要だと考えています。

開封パーセンテージに対するオプトアウト率が比例しているかなども含め、メールを送ったあとの反応は複数のツールを入れて計測をしています。

ウェブサイトともSNSとも違うメルマガ

━メールのメリットとはなんでしょうか?
気持ちをきちんと入れ込むことができる点です。もちろんこちら側のメッセージを押しつけすぎないように、バランスは取らなければいけないのですが、自分たちの「知ってほしい」「伝えたい」という想いを込めることができると思っています。

━メールとSNSの違いは、どのように考えられていますか?
メールのメリットは、リッチさだと思います。
私たちのサービスを切り取った姿が一度メールマガジンに集約されていて、それをさらに切り取ったものがSNSの投稿になるのかなと思います。

━クーポンのようなオファーを、メルマガコンテンツとして提供することはありますか?
メルマガを読むこと自体がオファーとしての価値を持つように心がけています。
RSSやフィードリーというツールもある中で、どうしてメールボックスの一つを埋めさせてもらうのか。
業務上さまざまなメルマガを購読していますが、開封して目を通すメルマガの共通点は「読むために投資した時間に見合う情報が得られる」ということだと思ったんです。
それに足るものを提供することが、サービスを提供する側として親切であり、企業のブランディングになると考えています。

━メディア系だと、メールマガジンに力を入れない会社も多いと思います。

株式会社INITIAL 松岡さん

 

INITIALは自分たちで取材へ向かい、一次情報を取っているという強みがあります。
そうして用意したコンテンツを魅力的に見せる場所がウェブサイトなのか、SNSなのか、メルマガなのか、という手段の違いはありますが、INITIALから出されるものは、すべて等しくコンテンツだと思っています。「メールマガジンだから」というよりは、自分たちの一つのサービスの側面として、絶対的に妥協したものは出したくないということが、すべてです。

メールマガジンの担当者は1人でも、1人で戦っているわけではない

━1つのメールマガジンを作るのに、どれくらい時間をかけていますか?
内容は1週間の間に都度考えていますが、実作業は2〜3時間ほどです。

私は現在マーケティングを担当していますが、つい最近まで記事を作る側にも所属していました。自分のミッションとして、楽しみながらやっているという感じです。

━担当は松岡さんだけなのでしょうか。
担当は私1人です。ただし会社全体から意見が届きますので、1人で戦っているわけではありません。
弊社はお互いの意見をストレートに伝え合う、オープンコミュニケーションのカルチャーがあるため、「もっとこうしたほうが良いんじゃない?」というフィードバックも常日頃からもらえるため改善をしやすく、とてもありがたい環境です。

件名やデザインはPDCAを回している

━メールマガジンのタイトルは毎回、オリジナルで作られているのですか?
タイトルに関してのテンプレートはほぼなく、毎回検証を繰り返しています。より多くの読者の方々に読んでもらうため、ずっと検証し続けていくと思います。

━デザインに関してはいかがですか?
社内のデザイナーにも意見を聞きながら作っています。
テンプレートに関しては、どうしたらユーザーの方々や読者の皆さまが楽しめるようなデザインにできるかとPDCAを回しているところです。

━メールマガジンに載せるコンテンツで、ネタ切れになったり、載せるものが足りなくなることはありませんか?
そういうときもあります。それでも「出さない」という最悪の選択肢はとりたくないので、ユーザーの皆さまに何を面白がっていただけるのかと考えます。例えば業界に特化した昨今の資金調達の流れを紹介するといったオリジナルの企画を立てたこともあります。

━逆に、全部は載せられないということもあると思います。
選定基準として過去記事のPV傾向を参考にすることもありますが、「INITIALの読者にはここを読んでもらったほうが面白そうだ」と弊社が積極的に判断するものをピックアップすることも多々ありますね。

有料メルマガのリッチなコンテンツに影響を受けた

━参考にしているメールマガジンにはどんな会社がありますか?
弊社のグループ会社にはなりますが、Quartz Japanで出している、メールマガジンが、ここ数カ月の中で番衝撃的でした。同社はメールマガジンを有料コンテンツとして毎朝と夕方に配信をしています。有料という点もありますが、コンテンツがリッチで、新聞でいうところの朝刊・夕刊をそのまま代替しているような感じです。

 

近頃はアプリのプッシュ通知が速報ツールとして広く使われていると思うのですが、これは速報的なものではなく、きちんとした取材記事がメール内で完結しています。

読んでいると理解度・納得度がものすごく高い。「これが、きちんと一つのコンテンツとして、メールマガジンを取り扱っている会社の形なんだ」ということに衝撃を受けました。

INITIALとしても、メールマガジンをコンテンツの1つとして、今まで以上にきちんと取り組んでいこうという思いが強くなりました。私が、現在のような運用にしたいと思ったきっかけでもあります。

まとめ

INITIALのメールマガジンについてお話を伺って、なによりも印象的だったのは「メールマガジンもコンテンツである」と、メールマガジンだからと手を抜くことなく、Webメディアで記事を作るの同じように力を入れていることです。

私も含めて、多くのWebマーケターやメールマガジン担当者の目を覚ましてくれるように思います。
お話を伺った松岡さんの、コンテンツマーケティングやメディアに対する考え方にも強く共感をしました。

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著者情報:

by 遠藤 聡

iBound代表。社員数30名以内の小規模企業のデジタルマーケティングやECサイト運営の業務サポート、コンテンツマーケティングのサポート、企業研修。UdemyでWebマーケティング関連のコースを提供中(受講者数は2万人以上)【著書】1時間でわかるSEO対策(技術評論社)